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きたねー『バクマン』。でも、きっと応援したくなる『ウリッコ』漫画レビュー

『ウリッコ(殺野高菜/大森かなた)』は、読んでいて気持ちのいい漫画ではない。
主人公の境遇は重く、行動も決して褒められたものではなく、共感しろと言われても正直かなり難しい。

それでも、読み進めるうちに不思議と目が離せなくなり、気づけば強く応援してしまう。
そんな稀有な力を持った作品だ。

目次

あらすじ

歌舞伎町のネットカフェに住み、売春で生計を立てるキズミは、人生に夢も希望も抱けず、ただ惰性で生きている。
将来の展望もなく、何かを変えようという強い意志もない。

身分証も無い。

頼る家族も無い。

そんな中、同じ境遇の仲間から「漫画家は良い暮らしをしているらしい」という話を聞く。
その一言をきっかけに、漫画を描き始める。

友人:(キズミの落書きを見て)「漫画家なれんじゃね~?」

キズミ:「私でもいけんじゃね?」

欲望が渦巻く新宿の片隅で始まる、令和のまんが道。

ダウナーで限界な主人公。漫画喫茶で”ウリ”をしてその日暮らし。

キズミは、いわゆる「応援しやすい主人公」ではない。
向上心に溢れているわけでもなく、夢に燃えているわけでもない。
漫画を描き始めた理由も、純粋な憧れや情熱ではなく、あくまで金と現状からの逃避だ。

夢に向かって、親友と協力して、ヒロインと一緒に・・・そんなシチュエーションじゃない。

いわば、きったねーバクマンなのである。

その姿はとてもダメで、正直好感度は高くない。底辺の生活、歪んだ人間関係、自己肯定感の低さ。
しかし、この徹底したダウナーさと生々しさが、『ウリッコ』という作品の土台になっている。

考えも見通しも甘く、正直漫画をナメている。

ネカフェ店員君の「応援する気失せるなぁ」は正に読者の代弁(笑)

出典:『ウリッコ』

それでも・・・1話を見終わった時、きっとあなたはキズミを応援したくなっている。

不器用なりに、素直に、自分で考えて前に進む物語

『ウリッコ』が他の漫画家漫画と大きく違う点は、ここにある。
最初、キズミは漫画に対して、強い情熱を持っていない。

それでも。
何事もやり遂げたことのなかったようなキズミが、

上手くいかなくてもひたむきに。

失敗しても不器用に。

苦しみながら、悶えながら、しかし投げ出すことなく。

出典:『ウリッコ』

16pを書き上げるのだ。

「儲かる」と聞いて漫画を描き始める人は多いかもしれない。でも、実際にそれを行動に移しやり遂げる人がどれだけいるだろうか。

共感できないのに、応援してしまう理由

この作品の不思議なところは、主人公に感情移入しづらいはずなのに、なぜか強く応援してしまう点だ。
それは単なるアンダードッグ効果ではない。

底辺の生活描写があるからこそ、漫画に向き合い始める変化が際立つ。
漫画に興味がなかった売春婦が、気づけば漫画中心の生活になっていく過程が、驚くほど自然に描かれている。

時間を持て余していたキズミが、初めて何かに「没頭する」シーンはすごく良い。

その結果、こう思ってしまう。

もしかしたら、漫画家になれるかもしれない。

青春を美化しない青春漫画

『ウリッコ』には、キラキラした青春はない。努力は報われるとも限らないし、環境は厳しいままだ。

同じウリをしている仲間、ホス狂いの友達、流されやすいモブ男君。
それでも、ほんの少しずつ前に進んでいく姿や周囲との関係性には、確かに青春のまぶしさがある。人を突き動かす衝動がある。

ダウナーで、底辺で、非現実的。
それなのに、次の展開が気になって仕方がない。
今後、キズミが昇るのか、停滞するのか、それとも堕ちていくのか。
どの未来であっても、最後まで見届けたくなる。

総評

『ウリッコ』は、情熱系の漫画家漫画ではない。
夢を語る物語でも、成功譚でもない。
それでも、描写の丁寧さとリアリティの積み重ねによって、読者の心を確実に掴んでくる。

全然共感できない。
でも、なぜか応援してしまう。
そんな感覚を味わいたい人には、強くおすすめしたい一作だ。

もう一度言う。

1話を見終わった時、きっとあなたはキズミを応援したくなっている。

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