可愛らしい絵柄に、柔らかな空気感。
しかしこの作品を「ほんわか系の恋愛漫画」だと思って手に取ると、確実に心を抉られる。
『ねずみの初恋』は、殺し屋として育てられた少女と、何も知らない普通の青年の“初恋”を描いた物語だ。
あらすじ
ヤクザ組織に殺し屋として育てられ、人の愛を知らずに生きてきた少女・ねずみ。
偶然出会った、普通の青年・あお君。
二人は恋に落ち、ささやかな同棲生活を始める。
ご飯を作り、笑い合い、眠る――
ねずみにとってそれは、生まれて初めて手に入れた「普通の幸せ」だった。
しかし、組織はそれを許さない。
あお君は誘拐され、抹殺の危機に晒される。
愛する人を救うため、ねずみが差し出した条件は――
「私が、あお君を殺し屋にします」
あまりにも残酷で、あまりにも切ない、初恋の物語だ。
YouTube(コミックDAYS)で①~⑤話が動画形式で視聴可能です!
作者:大瀬戸陸 / アルコ&ピースのインタビューが面白い!
なんと2025年時点で23歳と言う若さ!
幼少期にスプラッタ映画を観て、初めて見た漫画はなんと『彼岸島』・・・(あと『殺し屋イチ』など・・・スゴイ!)
ふわりとした日常と、凄惨な現実のギャップ
この作品が読者に強烈な印象を残す最大の理由は、日常描写と暴力描写の落差にある。
二人で過ごす時間は驚くほど穏やかだ。不器用な会話、ぎこちない距離感、同棲生活の小さな幸せ。
ねずみが「あお君と暮らすようになって、ちゃんとご飯を食べるようになった」
――そんな細やかな描写が胸に刺さる。
しかしページをめくると、拷問、殺し、暴力、洗脳。
容赦のない大人たちの世界が描かれる。
その対比があまりにも残酷で、「この幸せは、長く続かないんじゃないか」と読者に突きつけてくる。
純愛だからこそ、鬱になる
ねずみとあお君の関係は、とても純粋だ。計算も、駆け引きもない。
ただ「一緒にいたい」「守りたい」という気持ちだけで結ばれている。
だからこそ、この物語は重い。
世界は二人に一切の救いを用意していない。
むしろ、愛するほどに、壊れていく構造になっている。
読んでいると自然と、
「どうか幸せになってほしい」
「せめて二人だけは救われてほしい」
そう願ってしまう。
精細な絵柄と、静かに忍ばせられた伏線
『ねずみの初恋』は、感情だけでなく構成の巧さも光る。
- あお君が、最初からねずみの正体を知っていたかのような描写
- 背景にさりげなく配置される意味深なメッセージ
- 重要人物たちに共通する「色」を連想させる名前
一読しただけでは気づかない違和感が、読み返すほどに不気味さを増していく。
これは「可哀想な恋愛漫画」ではなく、綿密に設計された物語だと感じさせられる瞬間だ。
表紙に騙されてはいけない
可愛い絵柄、柔らかな雰囲気。しかし中身は、超ハードボイルド。
殴る。殴られる。人が死ぬ。それでも物語の中心にあるのは、命がけの初恋だ。
心と体の痛みが、確かに伝わってくる。
総評:こんな人におすすめ
- 鬱展開・救いのない物語が好きな人
- 純愛×残酷な世界観に弱い人
- 感情をえぐられる漫画を求めている人
※グロ・暴力表現が苦手な人には、正直おすすめしにくいです・・・
幸せを描くのが上手い漫画は多い。
だが同時に、苦しみをここまで美しく描ける作品はそう多くない。
『ねずみの初恋』は、読後、静かに心を壊してくるタイプの名作だ。
「幸せになってほしい」と願った分だけ、不安も大きくのしかかってくる。
それでも、それでも願いたい。二人の幸せを・・・
ほんとに、頼むよ・・・・マジで・・・

コメント