正義のためなら何をしてもいいのか?戦隊ヒーローの皮を被ったインモラルサスペンス
スーパー戦隊ものと聞くと、どうしても王道のイメージが浮かぶ。
仲間との絆、熱い友情、悪を討つ正義。
多少ダークな要素があったとしても、最後には「ヒーローらしさ」に着地する。
『戦隊タブー』も、最初はそんな作品かと思った。
だが読み進めるほど、その予想は気持ちよく裏切られる。
これは戦隊ヒーローのタブーを描く作品ではない。
もっと根本的に、「人として踏み越えてはいけないライン」を正義の名のもとに踏み越えていく物語だ。
あらすじ
近未来。
人類は襲い来る怪人によって恐怖のどん底に突き落とされていた。
世界の平和を守るため結成されたのは、結束戦隊クロスレンジャー。
今日も正義のために戦うヒーローたち――のはずだった。
正義感に燃える男、クロスレッドこと赤間烈央。
彼はある日、戦隊の結束に綻びが生じていることを知らされる。
その原因は、クロスピンクが抱える「レッドへの想い」だった。
仲間の士気を高め、戦隊の結束を守るため。
レッドが選んだ行動は、ピンクと一夜を共にすること。
そしてここから、すべてが壊れ始める。
レッドの正義が、とにかく怖い
赤間烈央は、過去のトラウマから怪人殲滅を絶対的な正義として掲げている。
その信念はブレない。むしろ真っ直ぐすぎる。
問題なのは、その正義感が強すぎるあまり、倫理観のブレーキが壊れていることだ。
戦隊の結束を守るためにピンクと関係を持つ。
この時点でかなりアウト寄りだが、まだ「歪んだ判断」として飲み込めなくもない。
しかし――
彼は既婚者だったのだ!
しかも子持ち。
ここで一気に作品の空気が変わる。
「ああ、これは軽い恋愛トラブルじゃない」と。
正義のためなら罪も許される。
そんな危うい思想を、本気で体現している男なのだ。
タブーの方向性が想像と違う
タイトルから受ける印象だと、「戦隊モノの裏側をちょっとエロく、ちょっとダークに描く作品」くらいを想像する人も多いと思う。
実際、自分もそうだった。
でも『戦隊タブー』が触れているのは、そんな生易しいものじゃない。
ピンクの暴走気味な恋愛感情。
極端に自己愛の強いイエロー。
病みを感じさせるグリーン。
どこか底の見えないブルー。
そして、その全員を巻き込むレッドの狂気じみた正義。
この作品の「タブー」は戦隊としてのルール違反ではなく、
人間として踏み越えてはいけない領域そのものだ。
まだこれは序の口にすぎない
『戦隊タブー』の恐ろしいところはここだと思う。
レッドの不倫だけでも十分ヤバい。
普通の作品なら、それだけで大きな事件だ。
でも、この漫画は明らかにそれを「導入」として扱っている。
各キャラクターに不穏な裏の顔がちらつき、家庭環境、執着、欲望、監視、依存――
もっと大きな崩壊が待っている気配しかしない。
何より怖いのは、レッド本人がそれを悪いと思っていないことだ。
「正義のため」という大義名分がある限り、彼はどこまでも踏み込んでいけてしまう。
この先どこまで壊れるのか。それを見たくて読む手が止まらない。
レッドに対する謎の安心感
もちろん曲者はレッドだけではない。
様々な敵が多様な搦手でレッドを陥れようとする。
しかし、読者はこう思ってしまうのだ。
「絶対レッドの方がゲスだし、一枚上手だろ?」と。
夜神月バリのゲススマイルに、いつしか安心感すら持ってしまうのだ!
それがいつのまにかこの作品の「魅力」になってしまう。
ハッピーエンドの予感がまるでしない
ここまで読んで感じるのは、この作品に爽やかな着地はたぶんない、ということだ。
もちろん、今後どう転ぶかは分からない。
だが少なくとも、王道戦隊もののような「仲間の絆で全部解決!」みたいな未来はまったく見えない。
むしろ、誰かが壊れるか、全員が壊れるか。
そんな結末すら想像してしまう。
それでも、いやだからこそ、続きを追いたくなる。
総評
『戦隊タブー』は、戦隊ヒーローのパロディではない。
正義という言葉を振りかざす人間の危うさを、かなり攻めた形で描くインモラルサスペンスだ。
賛否はかなり分かれると思う。
倫理的にキツいと感じる人も多いはずだ。
でも、だからこそ面白い。
「正義とは何か」
そんな重いテーマを、まさか不倫戦隊ものみたいな見た目からぶつけてくるとは思わなかった。
絶対にハッピーエンドにならなそう。
でも、その破滅の行き先を最後まで見届けたくなる。
かなり危険な匂いのする一作だ。

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