『白鳥運子は31画』(原作/松明明利 作画/ますやまある) は、“名前の画数”を人生の支えにして生きてきた女性の狂気と執着を描くサスペンス作品です。マガポケ・コミックDAYSなどで無料で読むことができます!
主人公の名前は「白鳥運子」。(シラトリ カズコ ”ウンコ”じゃないよ!)
そして彼女は、自分の名前の総画数である「31画」は大吉であり、“幸せになることが約束された数字”だと信じて生きています。
かなりインパクトの強い設定ですが、この作品の怖さはそこから。最初は少し変わったポジティブ女子に見える運子が、読み進めるほどどんどん危うく見えてくるんです。
不幸すら「幸せになるための伏線」だと信じる女
運子はかなり不遇な人生を送っています。
繰り返される上司からのパワハラ。周囲からの冷ややかな視線。通行人に車の泥をかけられる。理不尽な扱いを受けても、彼女は怒らない。
なぜなら、「これは幸せになるための伏線だから」と信じているからです。(言い聞かせている ようにも・・・)

この考え方だけ見ると、ある意味すごく前向き。
実際、「嫌なことも幸せへの前振りだと思えば頑張れる」という感覚は、少し共感できてしまう部分もあります。
でも、運子の場合はそれが異常なレベル。何があっても「31画だから大丈夫」。それだけを支えにして生きている。
読んでいるうちに、「ああ、この人はずっと“31画”にすがって生きてきたんだな……」という危うさが見えてきます。
29歳になるまで、ひたすら“幸せになる瞬間”を待ち続けている姿はかなり狂気的です。
“運命の再会”から物語が崩壊し始める
そんな運子はある日、学生時代に片思いしていた久佐井 広(クサイ ヒロシ)と偶然再会します。
(この久佐井君も中々辛い人生を歩んでまして。事故で家族が植物状態になり医療費のために闇バイトという・・・)
名前からしてクセが強い(笑)でも運子にとっては、まさに“運命の相手”。
結婚したら 久佐井 運子(クサイ ウン・・・カズコ) かぁ~w
久佐井は学生時代も自分の名前を茶化さず、むしろ褒めてくれた優しい男性。彼もまた、ポジティブな運子に惹かれていました。
これまで積み重ねてきた不幸が、ようやく報われる瞬間。ついに31画の運命が動き出すのか!?
……と思った矢先。
久佐井の前に、闇バイト絡みの反グレ関係者が現れる。
そして暴力。
痛めつけられる久佐井を見て、運子は激昂。黒田を刺殺してしまいます。

ここで作品の空気が一気に変わります。(右側は凄惨な描写のため、トリミングしています💦)
それまでどこか不器用なラブコメのようだった物語が、完全に狂気・サスペンスに振り切れる。
しかも運子は、ただパニックになっているわけではない。“自分の幸せを守るため”に行動しているようにも見えるのが怖いんです。
“普通じゃない”のに、本人だけは幸せそうなのが怖い
この作品、本当に怖いのはここからです。
運子は黒田を刺殺したあと、その遺体を久佐井の犯行に見せかけようとします。そして二人で山中へ向かい、身元を隠すために遺体を損壊していく。(大き目の意思でぐっちゃんぐっちゃんにする)
かなり凄惨なシーンなのですが、恐ろしいのはその時の運子のテンションです。二人で石を持ち上げながら「初めての共同作業」と言い出すなど、完全に感覚がおかしい。


さらに遺体に砂糖水をかけ、虫を集めて損壊を勧めようとするなど、やっていることもかなりエグい。なのに本人はどこか楽しそうなのです。
そして何よりヤバいのが、その後の逃亡を運子が「ドライブデート」みたいな感覚で捉えていること。
久佐井を家に連れてきて振る舞った料理が「ハンバーグ」いうのもかなり怖い。(だってお前、昨夜黒田をぐっちゃぐっちゃにした後なんだぞ!???)

明らかに“大事な何か”が欠落している。
でも本人だけは、幸せな恋愛イベントを進めているような空気感なんですよね。そこがこの作品の不気味さだと思います。
偽装工作もガバガバ。だからこそ怖い
しかも運子、別に犯罪の天才ではありません。むしろかなり行き当たりばったりです。
野犬に襲われたように見せるため、棒きれで足跡を作ったりするのですが、そもそも数時間で遺体がそこまで損壊するのは不自然。
さらに、久佐井の家に残った自分の痕跡など、“第三者の存在”につながる部分も全然処理できていない。

冷静に考えると穴だらけです。
でも運子は、「31画だからきっと大丈夫」くらいの感覚で突き進んでいるように見える。
この危うさが本当に怖い。
『マイホームヒーロー』っぽさもある。でも決定的に違う
日常が半グレによって侵され、大切な人を守るために人を殺めてしまう。
この流れを見て、『マイホームヒーロー』を連想する人もいると思います。実際、空気感は少し近いです。
ただ、決定的に違う部分がある。鳥栖哲雄はめちゃくちゃクレバーで、綿密に考え、実際に完全犯罪レベルの偽装工作をやってのける人物でした。
一方で運子は違う。
少し考えればバレそうなこと、ちゃんと調べられたら危険なことに対する危機感がかなり薄い。その場の感情と勢いで突き進んでいる。
だから読んでいて、「いやそれ絶対ダメだろ……!」と不安になるんです。
でも同時に、その危うさから目が離せない。
31画は本当に“幸せ”をくれるのか
正直、「ここからどうやって幸せになるんだ……?」という気持ちになる作品です。ハッピーエンドがまったく想像できない。
でも、だからこそ続きが気になる。
“31画だから幸せになれる”。
運子が信じ続けてきたその言葉は、本当に伏線回収されるのか。
それとも、全部が破滅へ向かっていくのか。
かなり不穏で、人を選ぶ作品ではありますが、ジワジワと精神を侵食してくるタイプのサスペンスが好きな人にはかなり刺さる作品だと思います。

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